物語を紡ぐことができるあなたは、
無知な私の語彙力をよく可愛がる。
かわいい。
おもしろい。
すごい。
やばい。
すき。
感じたままの言葉を口から出せば、
クスクスとあなたが笑う。
馬鹿にされているように感じるけれど、
そうではないよと、あなたは微笑む。
可愛いんだと、たわむれる。
ある雨の日に、あなたは言った。
「緑色の紫陽花は病気なんだよ。でも、この色が僕は好きなんだ」
「病気なんでしょう?どうして好きなの?」
「綺麗だろう」
「綺麗だね」
「理由はそれだけ」
「それだけ?」
「花に言葉はいらないんだ。それだけ。さぁ、身体が冷える。こっちへおいで」
理由がそれだけでいいのなら、
ねぇ、それだけでいいのなら、
「あなたがすき」
「君はまたそう言う事を」
「綺麗だから」
紡ぐ言葉が、
花を見つめる瞳が、
雨の日に駆けるその優しさが、
「綺麗だから、あなたがすき」
恋に言葉はいらないの。
雨音の中、あなたの驚く顔がのぞく。
なるほど、あなたの言葉が染みてくる。
馬鹿になどしていない。
ただ、ただ、
驚くあなたが可愛いと思った。
★タイトル『イルネスワード』 ★朗読時間:約2分 ★ひとこと: まだ!ギリギリ梅雨だ!!!
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