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執筆者の写真roco

冬眠する君、そして僕。



冬の間冬眠をする君。


君の冬眠は特殊で全てを凍らせて眠ってしまう。

心臓の音もしない。

血の温かさも感じない。


そうして、そんな君を見ていると思う。


君は寝ているのではなくて死んでしまったのではないだろうか?


一度考えたなら悪い想像はふりつもる雪のように溢れた。


中々溶けない不安を仕方なく抱えて歩く冬は長い長い時間だった。



冬が明けて、君が目覚めた。


その瞬きが、息遣いが、ふわふわと揺れる髪が、君が生きていることを教えてくれた。


僕は嬉しくて、でも、こんなに不安にさせたことに少しムカついてしまった。

だから思わず言葉を投げてしまったんだ。


「僕がどれだけ辛かったか、君にはわからないだろうね」


すると君は微笑んで言った。


「目覚めないかもしれない不安と、知らないうちにあなたが死んでしまっているかもしれない不安と、どちらが辛いのでしょうね」


どくん、と僕の中に何かが走る。


僕も冬眠していたのかもしれない。

そう思うほど胸が強く音を立て初めて、僕らの間に春がくる。



★タイトル『冬眠する君、そして僕』 ★朗読時間:約3分 ★ひとこと:季節外れで申し訳ないです。随分前にTwitterであげていたのですが…あげるのがとても遅くなってしまいました。完全に心臓を止めて冬眠する動物がいると聞いて衝動で書いた…気がします(うろ覚え)


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