君が歩く、そのための言葉たち
- roco
- 2021年1月11日
- 読了時間: 3分
更新日:2021年1月11日

あれ?
もしかして、まだ起きてるんですか?
…さては、眠れないんですか?
それは困ったね。
君はちゃんと休まないと。
そうだ、じゃあ、いきなりですが、
少しだけ私と散歩をしませんか?
本当に、いきなりなんだと、思ったかな。
散歩と言ってもね、私が今から言うことを君にちょっと想像してもらうだけです。
図々しく隣を歩いたりはしないし、
君が嫌がることはさせません。
だから少し、君の時間をもらって、私の声を聞いてくれませんか?
もしも許してくれるなら、ゆっくり目を閉じて。
私の声に集中してみてください。
君を外に連れ出しますね。
想像してみましょうか。
君は今、道を歩いています。
ただ、ただ、歩いています。
みぎ、ひだり、みぎ、ひだり、
心地よいテンポを刻んで歩いています。
まえ、うしろ、まえ、うしろ、
風を少し切って腕を動かしています。
手には何も持っていません。
かばんも、スマホも、持っていません。
でも、着てる洋服はとびきりです。
お気に入りで、ここぞという時に着る、
君の一番好きな服。
着れましたか?
君の一番好きな服。
うん、似合ってます。
君はこの道を知っています。
君の一番好きな道です。
空が広く見える道かもしれないし、
小さい頃の思い出がある道かもしれないし、
毎朝毎晩通る四季を知った家路かもしれないし、
たった一度行ったあの旅行先かもしれない。
君の一番好きな道です。
歩けそうですか?
君の一番好きな道。
君が一番歩きたいと思う道を、歩きたいはやさで歩いてみて。
さて、周りには何が見えますか?
木々はありますか?
花は咲いていますか?
高いビルはありますか?
それか小さな一軒家でしょうか?
公園が見えるかもしれないし、
畑や田んぼが見えるかもしれない。
周りの景色はどんな色をしてますか?
朝なのか、昼なのか、夜なのか、
それによっても変わるよね。
暖かい色はある?
寒い色はある?
優しい色とか、
強い色とか、
いろんな色、はっきり見えてきましたか?
世界っていろんな色で出来てるね。
自分も景色もよく見えるようになったなら、
少し立ち止まってみましょうか。
そしたら今から私が「せーの」と声をかけるから、
同時に後ろを振り向いて見ましょうか。
振り向く瞬間、
今まで歩いてきた道も一気に色づいていくイメージをもって。
振り向いたあなたがスタート地点で、
そこから一気に世界が広がるイメージ。
出来そうですか?
あなたが歩いた素敵な道、
きちんと描けそうですか?
それじゃあ、行きますよ。
せーの。
ねぇ、とても、綺麗ですね。
どれくらい想像出来ましたか?
はっきり色付いた人もいるだろうし、
思ったよりぼやけた人もいるかもしれないですね。
来た道と同じように、
これから行く道だって、
ハッキリ見える人もいれば、
ボヤけてる人もいるでしょう。
でもね、それでいいんですよ。
過去も未来も人それぞれ。
「あの時」を強く思い出せなくなってもいいんです。
「いつか」がはっきり想像できなくてもいいんです。
今、お気に入りに包まれている君がここにいる。
それだけでいい。
さぁ、不安はいなくなりました。
安心して、大好きな道を歩いていきましょう。
ねぇ、大切な君。
おやすみなさい。
★タイトル『君が歩く、そのための言葉たち』 ★朗読時間:約6分 ★ひとこと:
何となく道を歩いていた時に『このなんでもない道もここにしかない特別な景色なんだよな』と思ったことと、とある寝落ち配信者様の声を聞いていて『優しい声で寝る前にお話をしてもらうならどんなのがいいかなぁ』と想像した結果の作品です。
是非大切な誰かを寝かせてあげてください。
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